
精神疾患があっても、安心して医療を受けるために ― 医療費を安くする7つの制度
精神疾患の治療には、長い期間を要することが少なくありません。通院や薬代など、医療費が家計を圧迫することに不安を感じている方もいるでしょう。しかし、日本には、精神障害を持つ方が安心して医療を受けられるように、医療費の自己負担を軽減するさまざまな公的支援制度が存在します。
中でも最も重要なのが 「自立支援医療(精神通院医療)」 で、通常3割の医療費が1割に軽減される仕組みです。そのほかにも、精神障害者保健福祉手帳による医療費助成、高額療養費制度、障害年金、税制上の優遇措置など、組み合わせて利用できる制度が多く存在します。
この記事では、精神障害になったときに医療費を安くするために利用できる制度を体系的に整理し、 「まず申請すべき制度」や「併用できる制度」 をわかりやすく解説します。
これから申請を考えている方や、ご家族をサポートしたい方はぜひ参考にしてください。
1. 自立支援医療(精神通院医療)【最重要】
精神疾患のある方にとって最も重要な制度が 自立支援医療(精神通院医療) です。
制度の概要
通院治療にかかる医療費の自己負担を 通常3割 → 1割 に軽減する制度です。
対象となる医療
- 外来診療
- 投薬
- デイケア
- 訪問看護
対象となる疾患
統合失調症、うつ病、双極性障害、PTSD、不安障害、てんかん、認知症、発達障害など。
負担軽減内容
- 通常3割 → 1割負担
- 所得に応じて月額上限額(2,500円〜20,000円)が設定
- 生活保護世帯は0円
申請方法
- 申請場所:市町村の障害福祉課・保健福祉課
- 必要書類:申請書、医師の診断書、健康保険証、所得証明、マイナンバー確認書類
👉 精神障害をお持ちの方は、まず最初にこの制度の申請を検討するのが基本です。
2. 精神障害者保健福祉手帳による医療費助成
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、自治体によっては 医療費助成制度(マル障など) を利用できます。
例:東京都の場合
- 対象:精神障害者保健福祉手帳1級
- 住民税非課税世帯:医療費自己負担なし(食事代のみ)
- 課税世帯:外来は1回200円(上限12,000円)、入院は1日200円(上限57,600円)
他の対象者(東京都例)
- 身体障害者手帳1・2級
- 愛の手帳1・2度
※ 自治体によって内容が異なるため、お住まいの地域の福祉課で確認が必要です。
3. 精神障害者保健福祉手帳による特典
手帳は医療費助成以外にも大きなメリットがあります。
- 税制上の優遇措置(障害者控除など)
- 公共交通機関の割引
- 公共施設利用料の減免
- NHK受信料の減免
特に1級の場合は、心身障害者医療費助成制度の対象になるため、医療費の軽減効果が非常に大きくなります。
4. 高額療養費制度
医療費が1か月で高額になった場合に、自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度です。
自己負担限度額(70歳未満・一般所得者の場合)
80,100円+(医療費-267,000円)×1%
ポイント
- 自立支援医療と併用可能
- 入院や治療費がかさんだ場合に有効
5. 障害年金
精神障害で日常生活や就労に大きな支障がある場合、障害年金を受け取れる場合があります。
支給額(令和6年度)
- 障害基礎年金1級:年額1,020,000円
- 障害基礎年金2級:年額816,000円
- 障害厚生年金:報酬比例+配偶者加給年金
特典
- 年金は非課税
- 国民年金保険料の法定免除
6. 税制上の優遇措置
精神障害者保健福祉手帳を持っている方は、税制面でも優遇が受けられます。
- 障害者控除:27万円(特別障害者控除は40万円)
- 医療費控除:年間医療費が10万円(所得200万円未満なら所得の5%)を超えた分が控除対象
7. 生活保護制度
生活保護を受けている場合は、さらに手厚い支援を受けられます。
- 医療扶助:医療費が全額無料
- 障害者加算:月額17,870円〜26,810円(精神障害者保健福祉手帳所持者)
8. その他の制度
- 国民健康保険料の減免:手帳所持者は自治体によって減免あり
- 介護保険料の減免:65歳以上で精神障害がある方は対象になる場合あり
9. 申請の優先順位とポイント
どの制度から申請すればいいか迷う方も多いですが、以下を目安にするとスムーズです。
- まず申請すべき制度
- 自立支援医療(精神通院医療)
- 精神障害者保健福祉手帳
- 手帳取得後に申請
- 心身障害者医療費助成(1級の場合)
- 障害年金
- 併用可能な制度
- 自立支援医療 + 高額療養費制度
- 障害年金 + 医療費助成
- 税制優遇措置(他制度と重複利用可能)
10. 相談窓口
制度の申請や利用にあたっては、専門家への相談が欠かせません。
- 市町村の障害福祉課
- 精神保健福祉センター
- 病院の医療ソーシャルワーカー
- 精神保健福祉士
(Q&A)
Q1. 自立支援医療は入院治療でも使えますか?
A. 自立支援医療は基本的に 通院治療専用の制度 です。入院費には適用されません。ただし、入院時の薬代や外来通院に関わる部分は対象になる場合があります。入院費用を軽減したい場合は、高額療養費制度 や自治体の医療費助成制度を併用する必要があります。
Q2. 精神障害者保健福祉手帳は何級から医療費が安くなりますか?
A. 医療費助成の対象になるのは、自治体によって異なりますが、多くの場合 1級 が対象です。ただし、2級や3級でも「税控除」や「公共料金・交通機関の割引」などのメリットがあります。医療費軽減を目的にする場合は、等級と地域の制度内容を確認しましょう。
Q3. 高額療養費制度と自立支援医療は同時に使えますか?
A. はい、併用可能です。まず自立支援医療で自己負担を1割に軽減し、そのうえで高額療養費制度を適用すれば、さらに払い戻しを受けられる場合があります。
Q4. 障害年金と生活保護は同時に受け取れますか?
A. 障害年金を受け取りながら生活保護を利用することは可能です。ただし、障害年金は収入とみなされるため、生活保護費がその分減額されるケースがあります。生活保護を検討している方は、福祉事務所でシミュレーションしてもらうと安心です。
Q5. 制度の申請は自分一人でもできますか?
A. 可能ですが、書類が多く複雑で、医師の診断書や自治体とのやりとりが必要になります。そのため、病院のソーシャルワーカー や 精神保健福祉士 に相談しながら進めるのがおすすめです。
Q6. 医療費が安くなる制度は全国共通ですか?
A. 「自立支援医療」「高額療養費制度」「障害年金」「税制上の優遇措置」は全国共通ですが、医療費助成制度(マル障など)は自治体ごとに内容が異なります。同じ精神障害者保健福祉手帳1級でも、東京都では助成対象でも、別の県では対象外ということがあります。
Q7. 制度を申請すると就職や将来に影響しますか?
A. 基本的に制度利用の事実が企業に伝わることはありません。精神障害者保健福祉手帳を取得した場合、就職活動で「障害者枠」を選択するかどうかは本人の判断によります。将来の影響を心配するよりも、まずは安心して治療を継続できる環境を整えることが大切です。
まとめ
医療費負担を軽くする制度はたくさんありますが、最初に申請すべきは 自立支援医療 です。その後、精神障害者保健福祉手帳や障害年金、高額療養費制度などを組み合わせていくことで、より大きな支援を受けられます。
わからないことがある場合は、一人で悩まずに 自治体の障害福祉課や病院のソーシャルワーカーに相談 しましょう。制度を正しく知り、活用することが、安心して生活を続ける第一歩になります。
最後に
精神障害による医療費の負担は、制度を正しく利用することで大幅に軽減できます。特に「自立支援医療」は最優先で申請すべき制度であり、そのうえで精神障害者保健福祉手帳や高額療養費制度、障害年金などを組み合わせていくと安心です。
まずは主治医や病院のソーシャルワーカーに相談し、自分に利用できる制度を確認することから始めましょう。制度を知り、活用することが、安心して療養生活を送る第一歩となります。


